なぜ食事がアトピー性皮膚炎に影響するの? 炎症のメカニズム
アトピー性皮膚炎の主な症状である「かゆみ」や「赤み」は、皮膚で起きる「炎症」が原因です。
炎症は、体の中に侵入した異物やダメージに対して体が自分自身を守ろうとする反応ですが、アトピー性皮膚炎の場合は、この炎症反応が過剰に起きてしまいます。
では、なぜ特定の食べ物がこの炎症を悪化させるのでしょうか?
私たちの腸は、食べ物を消化・吸収するだけでなく、体にとって有害な物質が体内に入り込むのを防ぐバリアのような役割も果たしています。
しかし、特定の食べ物を摂りすぎると、この腸のバリア機能が低下し、本来は体に入り込むべきでない物質が血中に漏れ出してしまうことがあります。
これを「リーキーガット(腸漏れ)」と呼びます。
体は、漏れ出したこれらの物質を「異物」と認識し、排除しようとします。
この時、免疫システムが過剰に反応し、全身に炎症を引き起こすサイトカインという物質を大量に放出します。
この炎症反応が、最終的に皮膚に現れてアトピー性皮膚炎の症状を悪化させるのです。
肌を蝕む「4つの毒」とは?
私たちが日常的に口にする食べ物の中には、知らず知らずのうちに腸に負担をかけ、炎症を引き起こしやすいものが存在します。
それが、今回ご紹介する「4つの毒」です。
1. グルテン:腸のバリアを破壊する張本人
グルテンは、小麦や大麦、ライ麦などに含まれるタンパク質の一種です。
パンや麺類、お菓子など、多くの加工食品に含まれています。
グルテンは、私たちの腸の細胞と細胞の結合を緩めてしまう「ゾヌリン」という物質の分泌を促すことが知られています。
これにより、腸のバリア機能が低下し、リーキーガットを引き起こしやすくなります。
リーキーガットから漏れ出した未消化のタンパク質などが、体の免疫システムを過剰に刺激し、皮膚の炎症へとつながるのです。
2. 乳製品:隠れた炎症の火種
牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品は、健康に良いとされていますが、一部の人にとっては炎症の原因となることがあります。
乳製品に含まれるカゼインというタンパク質や乳糖は、消化しにくい場合があります。
特に乳糖不耐症の人は、乳糖を分解する酵素が不足しているため、未消化のまま大腸に届き、腸内環境を乱す原因となります。
また、カゼインがアレルギー反応を引き起こし、全身の炎症につながることも少なくありません。
3. 植物油:間違った油が炎症を加速させる
私たちが普段使っているサラダ油やコーン油、ひまわり油などの一般的な植物油には、オメガ6脂肪酸が多く含まれています。
適量であれば問題ありませんが、現代の食生活ではオメガ6脂肪酸の摂取量が過剰になりがちです。
オメガ6脂肪酸自体は体に必須の栄養素ですが、オメガ3脂肪酸とのバランスが非常に重要です。
オメガ6脂肪酸が多すぎると、体内で炎症を促進する物質が作られやすくなります。
一方、魚などに多く含まれるオメガ3脂肪酸は炎症を抑える働きがあります。
このバランスが崩れると、体内で慢性的な炎症が起きやすくなり、アトピー性皮膚炎の悪化につながる可能性があります。
4. 砂糖:炎症の「燃料」
お菓子やジュース、加工食品など、私たちの周りには砂糖があふれています。
砂糖の過剰摂取は、体内でさまざまな悪影響を及ぼしますが、炎症もその一つです。
砂糖を摂りすぎると、血糖値が急上昇し、それを下げるためにインスリンが大量に分泌されます。このような血糖値の乱高下は、体内で炎症性サイトカインの分泌を促進することがわかっています。
また、砂糖は腸内の悪玉菌のエサとなり、腸内環境を悪化させることで、間接的に炎症を助長する可能性もあります。
皮膚の炎症を抑えるためにできること
これらの「4つの毒」が肌の炎症にどのように影響するか、お分かりいただけたでしょうか?
では、実際に何をすれば良いのか、具体的なステップを見ていきましょう。
1. 「4つの毒」を意識して減らす・避ける
まずは、日々の食事からグルテン、乳製品、過剰な植物油、砂糖を意識的に減らすことから始めてみましょう。
・グルテン:パンや麺類を米粉製品やグルテンフリー製品に置き換える。
・乳製品:アーモンドミルクや豆乳などの植物性ミルクを試す。
・植物油:調理には、オリーブオイルやアボカドオイル、ココナッツオイルなど、酸化しにくい油を選ぶ。揚げ物や加工食品の摂取を控える。
・砂糖:お菓子や清涼飲料水、加工食品を減らし、自然な甘みのある果物などを活用する。
これらの食品を完全に断つのが難しい場合でも、まずは量を減らすことから始めてみましょう。
少しずつでも、変化を感じられるはずです。
2. 腸内環境を整える食事を心がける
腸内環境を整えることは、リーキーガットを防ぎ、炎症を抑える上で非常に重要です。
・発酵食品:味噌、納豆、漬物、甘酒など、腸に良い菌を増やす食品を積極的に摂りましょう。
・食物繊維:野菜、果物、きのこ、海藻など、食物繊維が豊富な食品は、腸内細菌のエサとなり、腸の健康をサポートします。
・オメガ3脂肪酸:魚(特に青魚)、アマニ油、チアシードなど、炎症を抑える働きのあるオメガ3脂肪酸を意識して摂りましょう。
3. ストレスマネジメントと良質な睡眠
食事だけでなく、ストレスや睡眠も炎症に大きく影響します。
ストレスは免疫システムを乱し、炎症を悪化させる可能性があります。
また、睡眠不足は体の回復機能を低下させ、炎症を慢性化させる原因になります。
リラックスできる時間を作り、十分な睡眠をとることを心がけましょう。
4. 食事療法と鍼灸の組み合わせで、より効果的な改善を目指す
アトピー性皮膚炎の改善には、体の内側からのアプローチである食事療法が非常に重要であることはこれまで述べてきた通りです。
しかし、さらに効果的な改善を目指すのであれば、鍼灸(しんきゅう)を組み合わせることを強くおすすめします。
なぜ鍼灸がアトピー性皮膚炎に有効なのか?
鍼灸は、東洋医学の考えに基づき、体の特定のツボに鍼を刺したり、お灸を据えたりすることで、体本来の治癒力を高める治療法です。
アトピー性皮膚炎に対しては、主に以下のメカニズムで有効性が期待できます。
・自律神経のバランスを整える:
アトピー性皮膚炎の患者さんには、交感神経が優位になりがちで、ストレスや不眠が症状悪化につながることが少なくありません。鍼灸は、副交感神経の働きを優位にすることで、自律神経のバランスを整える効果があります。これにより、体のリラックス状態が促され、ストレスによる炎症反応の悪化を抑えることができます。また、自律神経が整うことで、睡眠の質の向上にもつながり、皮膚の回復力を高めます。
・血行促進による皮膚の修復:
アトピー性皮膚炎の皮膚は、血行不良を起こしていることが多く、栄養や酸素が十分に行き届かない状態です。鍼灸は、ツボへの刺激によって局所の血行を促進します。これにより、皮膚細胞への栄養供給が改善され、老廃物の排出もスムーズになります。結果として、皮膚のターンオーバーが正常化され、バリア機能の修復が促されることで、炎症が鎮まりやすくなります。
・免疫系の調整:
アトピー性皮膚炎は、免疫システムの過剰な反応が関与しています。鍼灸は、単に血行を促進するだけでなく、免疫細胞の働きを穏やかに調整する作用があると考えられています。過剰に反応している免疫システムを落ち着かせることで、炎症性サイトカインの過剰な放出を抑え、アレルギー反応そのものを緩和する効果が期待できます。
・内臓機能の調整(特に消化器系):
東洋医学では、皮膚と内臓、特に消化器系は密接に関連していると考えられています。
鍼灸によって、腸の働きを司る自律神経にアプローチし、消化吸収能力を改善することができます。
これにより、食事療法で摂取した栄養素が効率よく吸収され、体内の毒素の排出もスムーズになります。
結果として、リーキーガットの状態が改善され、体内からの炎症因子を減らすことにつながります。
食事療法と鍼灸の相乗効果
食事療法で「4つの毒」を避け、腸内環境を整えることで、体の中からの炎症の原因を取り除きます。
そこに鍼灸を加えることで、自律神経のバランスを整え、血行を促進し、免疫系を調整するなど、体のシステム全体を底上げすることができます。
食事療法で原因物質の侵入を抑え、鍼灸で体の内側から炎症を鎮め、治癒力を高める。
この二つのアプローチを組み合わせることで、アトピー性皮膚炎の症状改善に、より強力な相乗効果が期待できるのです。
アトピー性皮膚炎は、体の中からのアプローチが非常に大切です。
今日から「4つの毒」を意識し、肌に優しい食事を心がけることで、あなたの肌の炎症が少しずつ落ち着き、快適な毎日を送れるようになるでしょう。
そして、鍼灸を取り入れることで、さらなる改善への道が開かれるかもしれません。
あなたの健康的な肌への第一歩を、一緒に踏み出しましょう!