
「免疫力を高めたい」と思ったとき、真っ先に浮かぶのは薬やサプリメントかもしれません。もちろんそれらも役立ちますが、実は毎日の食事こそが免疫の土台をつくっています。
私は鍼灸師として23年間、多くの方と向き合ってきましたが、体質改善で一番力を発揮するのは「食事の工夫」だと確信しています。
今日は、免疫力を高める食材と避けたい食品、そして近年注目されている「副腎疲労」と免疫の関係についてまとめます。
免疫を支える「基本の食材」
免疫を強くするには、まず体の「土台」を整える必要があります。そのためにおすすめしたいのが、以下の食材です。
- 発酵食品(味噌、納豆、ぬか漬けなど)
腸には免疫細胞の約70%が集まっていて、まさに「最大の免疫器官」と呼べる場所です。腸内環境を整えることで免疫の働きがスムーズになり、外敵から体を守る力が高まります。 - 根菜類(大根、にんじん、ごぼう)
地中で育った野菜は、体を温め、血流を良くし、免疫力の安定につながります。特に冷えやすい女性におすすめです。 - ビタミンCが豊富な食材(柑橘類、ブロッコリー、パプリカ)
ビタミンCはストレスや疲労で失われやすく、免疫細胞の働きをサポートします。毎日こまめに摂りたい栄養素です。 - きのこ類(しいたけ、まいたけ、しめじ)
免疫細胞を活性化させる成分が多く含まれていて、日常的に取り入れやすいのも魅力です。
季節を意識する食べ方
今の時期(9月)は、夏の疲れが残り、朝晩は涼しくなってきます。そんなときは胃腸を助ける食材がぴったりです。
- 山芋:胃腸を整え、消化を助け、体力を補う。秋のはじまりにおすすめ。
- れんこん:のどを潤し、炎症を鎮める。咳やだるさが気になるときに。
- 梨:体の熱を冷まし、潤いを与える。残暑の乾燥対策に。
食材を「旬」に合わせると、自然と体調が整いやすくなります。
避けたい食品とその理由
免疫を下げてしまう食材もあります。これらは「完全にやめる」のではなく、「減らす」意識を持つことが大切です。
- 砂糖のとりすぎ
血糖値が急激に上がると、免疫細胞の働きが一時的に弱まります。甘いものは楽しみながらも量を控えめに。 - 加工食品・添加物の多い食品
保存料や着色料などは体にとって異物であり、肝臓や腸に負担をかけます。疲れやすく、免疫が乱れやすくなります。 - 冷たい飲み物やアイスの習慣
胃腸を冷やすと消化力が落ち、栄養を吸収しにくくなります。結果的に免疫力が低下することに。 - アルコールの過剰摂取
肝臓を酷使すると免疫細胞の働きが低下します。たしなむ程度なら良いですが、毎日の習慣は控えめに。
体質別の工夫
人によって「弱りやすい部分」は違います。そこで、タイプ別の食材の工夫を紹介します。
- 冷えやすい人:しょうが、ねぎ、にんにくなど温め食材を。
- のぼせやすい人:梨、きゅうり、セロリで余分な熱を冷ます。
- 疲れやすい人:山芋、もち米、かぼちゃでエネルギーを補う。
同じ「免疫力アップ」でも、自分の体質に合わせることで効果がぐっと高まります。
副腎疲労と免疫の関係
ここで少し専門的な話をしましょう。
「副腎疲労」という言葉を聞いたことがありますか?
副腎は、背中の腎臓の上にちょこんと乗っている小さな臓器で、ストレスに対応するホルモン(コルチゾールなど)を出しています。
ところが、長期間のストレスや過労が続くと副腎が疲れてしまい、ホルモンをうまく分泌できなくなるのです。
その結果、
- 疲れがとれない
- 朝からだるい
- 風邪をひきやすい
- 気分が落ち込みやすい
といった症状が出やすくなります。
これはまさに「免疫力が落ちている」サイン。
副腎が元気をなくすと、免疫の働き全体が鈍り、炎症が長引いたり、病気が治りにくくなったりするのです。
ではどう対策するか?
- ビタミンC(柑橘類、パプリカ)
- マグネシウム(ナッツ、海藻)
- 十分な睡眠と休養
これらは副腎をサポートし、免疫力を回復させる大切な養生です。
食事と休養で副腎を守ることは、免疫を守ることにつながります。
まとめ
免疫力を高める食事の基本は、
- 発酵食品や旬の野菜をとる
- 甘いもの・加工食品・冷たい飲み物を減らす
- 自分の体質に合った食材を選ぶ
- 副腎を守る食事と休養を大切にする
シンプルですが、毎日の積み重ねが大切です。食事は薬以上に体を支えてくれる「日々の養生」です。
おわりに
免疫力を高めたいとき、大切なのは「足し算」よりも「引き算」。良い食材を加えるだけでなく、体を弱らせる食品を減らすことも同じくらい重要です。
そしてもうひとつ、現代人に欠かせないのが「副腎を休ませる工夫」です。
小さな習慣を積み重ねることで、免疫も副腎も元気を取り戻していきます。