「しっかり寝たはずなのに、朝からだるい」
「寝つきは悪くないのに、疲れが抜けない」
「夜中に何度も目が覚める」

 

こうした悩みがあると、多くの人はまず睡眠時間の短さストレスを疑います。
もちろんそれらも大切な要因ですが、実はもう一つ、見落とされやすい原因があります。

それが、タンパク質不足です。

「タンパク質って筋肉のためのものでしょ?」
 

そう思う方も多いかもしれません。ですが実際には、タンパク質は筋肉だけでなく、睡眠を整えるホルモンや神経伝達物質の材料にもなっています。

 

つまり、タンパク質が足りないと、体はただ疲れやすくなるだけではありません。
眠るための仕組みそのものがうまく働きにくくなるのです。

 

今回は、

  • なぜタンパク質不足で眠りの質が落ちるのか
  • 不眠や疲労感とどう関係しているのか
  • 今日から何を変えればよいのか

を、できるだけわかりやすく解説します。

 

 

タンパク質は「眠る力」の材料でもある

 

タンパク質は、肉・魚・卵・大豆製品などに多く含まれる栄養素です。
体の中では分解されてアミノ酸になり、そこからさまざまなものが作られます。

 

たとえば、

  • 筋肉
  • 皮膚や髪
  • 酵素
  • 免疫に関わる物質
  • ホルモン
  • 神経伝達物質

などです。

 

この中で睡眠と深く関係しているのが、神経伝達物質やホルモンです。

 

 

睡眠に関わる代表的なもの

 

1. セロトニン

「心の安定」に関わる神経伝達物質として有名ですが、実は睡眠にも重要です。
セロトニンは日中の気分や意欲を支えるだけでなく、夜になると睡眠ホルモンのメラトニンの材料になります。

 

2. メラトニン

夜になると分泌され、脳や体に「もう眠る時間ですよ」と伝えるホルモンです。
寝つきを助け、体内時計を整える働きがあります。

 

3. GABA(ギャバ)

脳の興奮をしずめ、リラックスを助ける神経伝達物質です。
緊張が強い人、頭が休まらない人では、この「落ち着かせる仕組み」がうまく働いていないことがあります。

 

これらはすべて、元をたどるとアミノ酸を材料にして作られるものです。
つまり、タンパク質が不足すると、眠るために必要な物質の材料も不足しやすくなるのです。

 

 

タンパク質不足で睡眠の質が落ちるのはなぜ?

 

ここをもう少しだけ、生理学的にわかりやすく整理してみます。

 

1. セロトニン・メラトニンが作られにくくなる

タンパク質を食べると、体内でさまざまなアミノ酸になります。
その中のひとつにトリプトファンというアミノ酸があります。

 

トリプトファンは、

トリプトファン → セロトニン → メラトニン

という流れで使われます。

 

つまり、トリプトファンが十分に入ってこないと、

  • 日中の気分が安定しにくい
  • 夜にメラトニンが作られにくい
  • 結果として寝つきや睡眠リズムが乱れやすい

という流れが起こります。

 

もちろん、タンパク質を食べればすぐ眠れるという単純な話ではありません。
ですが、そもそもの材料が不足している状態では、睡眠を整える土台が弱くなるのは自然なことです。

 

 

2. 血糖値が不安定になり、夜中に目が覚めやすくなる

 

睡眠が浅い人の中には、夜中の2時〜4時ごろに目が覚める方が少なくありません。
その背景のひとつに、夜間の低血糖があります。

 

タンパク質は、筋肉やホルモンの材料になるだけでなく、血糖値を安定させる助けにもなります。
朝や昼に糖質だけの食事が多かったり、夕食が軽すぎたりすると、血糖値が乱高下しやすくなります。

 

すると夜中に血糖が下がりすぎたとき、体は危険を避けるために

  • アドレナリン
  • コルチゾール

といった“起こすホルモン”を出して血糖を上げようとします。

 

その結果、

  • 夜中に急に目が覚める
  • 動悸っぽい感じがする
  • 寝汗をかく
  • 目が覚めたあと頭が冴えてしまう

といったことが起こりやすくなります。

 

「寝つけない」というより、眠っている途中で体が起こされてしまうイメージです。

 

 

3. 筋肉量が落ち、疲れが抜けにくくなる

 

タンパク質不足が続くと、体は足りない材料を補うために、自分の筋肉を分解してアミノ酸を取り出そうとすることがあります。
すると筋肉量が落ちやすくなり、基礎代謝や体力も下がります。

 

その結果、

  • 少し動いただけで疲れる
  • 朝からだるい
  • 回復に時間がかかる
  • 寝ても「元気になった感じ」がしない

という状態になりやすくなります。

 

睡眠は「体を修復する時間」ですが、その修復に必要な材料が足りなければ、寝ても回復しきれないのです。

 

 

4. 自律神経が乱れやすくなる

 

タンパク質不足がある人は、食事量そのものが少なかったり、栄養バランスが偏っていたりすることも少なくありません。
すると、体は慢性的に「省エネモード」や「緊張モード」に入りやすくなります。

 

その結果、

  • リラックスできない
  • 寝る前に頭が冴える
  • 眠りが浅い
  • 朝起きてもスッキリしない

といった、自律神経の乱れに似た状態が起こりやすくなります。

 

 

タンパク質不足がある人に起こりやすいサイン

 

「自分もタンパク質不足かも?」と思った方は、次のようなサインがないかチェックしてみてください。

 

こんな方は要注意です

  • 朝食がコーヒーだけ、パンだけで終わることが多い
  • 肉や魚をあまり食べない
  • 食が細い
  • 甘いものや麺類で済ませることが多い
  • 夕方になると強い疲労感が出る
  • 夜中に目が覚めやすい
  • 朝起きても回復感がない
  • 髪が細くなった、爪が割れやすい
  • 風邪をひきやすい
  • 気分の落ち込みや不安感が強い

 

もちろん、これだけで「タンパク質不足」と断定はできません。
ただ、睡眠の悩みとこうした特徴が重なっている場合は、食事の見直しが大きなヒントになることがあります。

 

 

不眠が続くと、体には何が起こるのか

 

「眠れないだけなら、少し我慢すればいい」と思ってしまう方もいます。
でも、睡眠不足や睡眠の質の低下が続くと、体にはじわじわ負担がたまっていきます。

 

不眠で起こりやすい問題

 

1. 疲労が抜けず、集中力が落ちる

脳も体も十分に回復できないため、

  • 仕事でミスが増える
  • 判断力が落ちる
  • ぼーっとする
  • やる気が出ない

といったことが起こりやすくなります。

 

2. イライラや不安が強くなる

睡眠不足は、感情をコントロールする脳の働きにも影響します。
いつもなら気にならないことが気になったり、ちょっとしたことで不安や焦りが強くなったりします。

 

3. 食欲が乱れやすくなる

睡眠不足は、食欲を調整するホルモンにも影響します。
その結果、甘いものや炭水化物を欲しやすくなり、さらに血糖値が乱れやすくなることがあります。
これがまた睡眠を悪くする、という悪循環につながります。

 

4. 免疫や回復力が落ちる

睡眠中には、体の修復や免疫の調整が行われています。
眠りが浅い状態が続くと、風邪をひきやすくなったり、疲れが長引いたりしやすくなります。

 

 

今日からできる、タンパク質不足による睡眠対策

 

では、どうすればよいのでしょうか。
大切なのは、「夜だけ何かを飲む」よりも、1日を通してタンパク質を安定して入れることです。

 

1. 朝食にタンパク質を入れる

これがかなり大事です。

朝にタンパク質をとると、日中の神経伝達物質の材料が入りやすくなり、血糖値も安定しやすくなります。
逆に、朝がパンとコーヒーだけだと、午前中からエネルギー切れを起こしやすくなります。

 

朝食の例

  • ゆで卵+味噌汁+ごはん
  • 納豆+卵+ごはん
  • ギリシャヨーグルト+ナッツ+果物
  • 焼き魚+ごはん+味噌汁

 

「完璧にやる」必要はありません。
まずは朝に卵1〜2個、納豆1パック、ヨーグルト1個のどれかを足すだけでも違います。

 

2. 毎食“手のひら1枚分”を目安にする

ざっくりした目安としては、毎食

  • 豆腐・納豆
  • ヨーグルト

などのタンパク源を手のひら1枚分くらい意識すると、極端な不足を防ぎやすくなります。

 

例:

  • 鶏むね肉、鮭、サバ、豚しゃぶ
  • 卵2個
  • 豆腐半丁+納豆
  • ギリシャヨーグルト+チーズ

 

3. 夜に糖質だけで終わらせない

「疲れているから、夜はうどんだけ」
「食欲がなくて、おにぎりだけ」

こうした食事は胃にやさしい一方で、夜間の低血糖を起こしやすくすることがあります。

夕食は、糖質だけで終わらせず、

  • ごはん+魚
  • ごはん+豆腐+味噌汁
  • うどん+卵+鶏肉

のように、タンパク質を少しでも添えるのがおすすめです。

 

4. 甘いもの・カフェインで疲れをごまかしすぎない

午後の眠気や疲労感を、甘いものやコーヒーで乗り切っている方は多いです。
ただ、それで一時的に元気になっても、血糖値や自律神経が乱れ、夜の睡眠に影響することがあります。

 

特に、

  • 夕方以降のカフェイン
  • 空腹時の甘いお菓子
  • 夜のアルコール

は、眠りの質を落としやすい要素です。

 

5. タンパク質だけでなく、ビタミン・ミネラルも大切

ここは意外と重要です。

セロトニンやメラトニンを作るには、タンパク質だけでなく、

  • ビタミンB6
  • マグネシウム
  • 亜鉛

なども関わります。

 

つまり、タンパク質を増やしても、栄養全体が不足していると改善しきれないことがあります。
睡眠の悩みが長く続いている方、疲労感がかなり強い方は、食事全体や血液データまで見直した方がよいケースもあります。

 

 

こんな場合は、タンパク質不足以外も疑った方がよい

 

睡眠の問題は、もちろんタンパク質だけで説明できるものではありません。
次のような場合は、他の要因も一緒に考える必要があります。

  • いびきが大きい、無呼吸を指摘された
  • 気分の落ち込みや不安がかなり強い
  • 動悸や息苦しさで目が覚める
  • 月経量が多く、鉄不足が疑わしい
  • 更年期症状が強い
  • 胃腸が弱く、食べても吸収できていない感じがある
  • 寝る前のスマホ、夜ふかし、ストレスがかなり強い

 

睡眠は、自律神経・栄養・ホルモン・血糖値・呼吸・生活習慣など、いろいろな要素が重なって決まります。
だからこそ、「睡眠薬を飲むか飲まないか」だけではなく、体の材料が足りているかを見ることが大切なのです。

 

 

鍼灸でできること

 

栄養だけでは整いにくい“眠れる体”をつくるサポート

ここまでお伝えしたように、睡眠の質にはタンパク質や血糖値の安定が深く関わっています。
ただ、実際の臨床では「食事を見直しただけではなかなか眠れない」という方も少なくありません。

その理由は、睡眠が栄養だけで決まるものではないからです。

 

眠りには、

  • 自律神経のバランス
  • 筋肉の緊張
  • 呼吸の浅さ
  • 胃腸の働き
  • ストレスによる脳の興奮
  • 冷えや血流不良

なども大きく関わっています。

 

たとえば、体に必要なタンパク質をとっていても、
ずっと交感神経が高ぶっている状態では、脳も体も休息モードに入りにくくなります。

また、胃腸の働きが落ちていると、せっかく食べた栄養をうまく消化・吸収できないこともあります。

そんなときに役立つのが、鍼灸による体の土台づくりです。

 

 

鍼灸は「眠るスイッチが入りやすい体」に整えるのが得意です

 

鍼灸のよいところは、単に「眠くさせる」ことではなく、
眠れる体の条件を整えることにあります。

具体的には、次のような変化をサポートできます。

 

1. 自律神経の緊張をやわらげる

「布団に入っても頭が冴える」
「疲れているのに眠れない」
「夜中に目が覚めると、そのあと眠れない」

こうした方は、体が休むモードに切り替わりにくくなっていることがあります。

鍼灸では、首肩まわりの緊張や呼吸の浅さ、腹部の硬さなどを整えることで、
交感神経優位の状態をやわらげ、副交感神経が働きやすい状態へ導いていきます。

 

 

2. 胃腸の働きを整え、栄養を使える体に近づける

睡眠のためにはタンパク質が必要ですが、
大切なのは「食べること」だけでなく、消化して吸収し、体の中で使えることです。

 

実際には、

  • 胃もたれしやすい
  • お腹が張る
  • 下痢や便秘がある
  • 食欲にムラがある

という方は、栄養をうまく取り込めていないことがあります。

鍼灸では、胃腸の緊張を和らげたり、お腹の血流や働きを整えたりすることで、
栄養が入りやすい土台づくりをサポートできます。

 

3. 血流や体温調節を整え、夜に休みやすい体にする

手足の冷えが強い方や、逆に夜にのぼせる方も、睡眠の質が落ちやすくなります。
体がうまく熱を放散できないと、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりするからです。

 

鍼灸は、筋肉の緊張をゆるめながら全身の血流を整え、
「夜に体がちゃんと休める状態」をつくるのが得意です。

 

 

睡眠の改善は「栄養」か「自律神経」か、ではなく両方が大切

 

睡眠の悩みがあると、
「サプリを飲めばいいのかな」
「ストレスの問題かな」
と、原因をひとつに絞って考えたくなるかもしれません。

 

でも実際には、

  • タンパク質不足で睡眠ホルモンの材料が足りない
  • 血糖値が不安定で夜中に目が覚める
  • 自律神経が高ぶっていて眠りが浅い
  • 胃腸が弱く、食べても吸収しにくい

といった要素が、同時に重なっていることが多いのです。

 

だからこそ、睡眠を整えるには
「何を食べるか」だけでなく、「その栄養を使える体になっているか」まで見ることが大切です。

鍼灸は、その“使える体”を整えるサポートとして、とても相性のよい方法だと私は感じています。

 

 

眠れない・疲れが取れない方へ

もしあなたが、

  • 寝ても疲れが取れない
  • 夜中に何度も目が覚める
  • 朝からだるい
  • 食事にも気をつけているのに改善しない
  • 胃腸が弱く、ストレスにも影響されやすい

という状態なら、

「睡眠の問題」だけでなく、自律神経・栄養・胃腸の働きまで含めて整えることが改善の近道になるかもしれません。

 

睡眠は、ただ眠るだけの問題ではありません。
体が回復できる状態にあるかどうかが、そのまま眠りの質に表れます。

 

 

まとめ

「寝ても疲れが取れない」は、体からのサインかもしれません

 

タンパク質は、筋肉のためだけの栄養ではありません。
睡眠に関わるセロトニン、メラトニン、GABA、ホルモン、回復力にも深く関わっています。

 

もし今、

  • 寝ても疲れが取れない
  • 夜中に目が覚める
  • 朝からだるい
  • 甘いものがやめられない
  • 食事がパンや麺だけで済みがち

という状態があるなら、睡眠の問題を「気合い」や「年齢」のせいにする前に、食事、特にタンパク質の不足を見直してみてください。

 

睡眠は、体が勝手に起こすものではありません。
眠るための材料があってこそ、はじめて深く休めるのです。

 

まずは今日、
朝食に卵や納豆を足すところから始めてみてください。
その小さな一歩が、「寝ても疲れが取れない毎日」を変えるきっかけになるかもしれません。

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