「体が使う量」と「食事で摂る目安」は別です
「脳は1日に100gほどのブドウ糖を使う」
「糖質は最低でも130g必要」
「糖質は摂らなくても大丈夫」
糖質について調べると、さまざまな数字や意見が出てきます。
これでは、結局どのくらい食べればよいのか分からなくなってしまいますよね。
この疑問を整理するために大切なのが、次の3つを分けて考えることです。
- 体が使うブドウ糖の量
- 食事から必ず摂らなければならない量
- 健康維持のために食事から摂る目安
この3つは、同じ数字ではありません。
まず「炭水化物・糖質・糖類」の違い
言葉の意味から整理しておきましょう。
- 炭水化物=糖質+食物繊維
- 糖質=炭水化物から食物繊維を除いたもの
- 糖類=糖質の一部で、ブドウ糖や果糖、砂糖などの単糖類・二糖類
つまり、ご飯やパン、麺、いも類に多く含まれる「でんぷん」は糖質ですが、食品表示上の「糖類」とは別のものです。
「糖類ゼロ」と書かれていても、でんぷんなどの糖質が含まれている場合があります。
また、厚生労働省が示している摂取目標は、厳密には「糖質」ではなく、食物繊維を含めた「炭水化物」の割合です。
体は1日に何グラムの糖質を使うのか?
ブドウ糖は、脳、赤血球、筋肉などでエネルギーとして使われています。
特に脳は、通常の食生活ではブドウ糖を主要なエネルギー源として利用します。米国の食事摂取基準では、成人の脳によるブドウ糖利用量を基に、炭水化物の推定平均必要量を1日100g、推奨量を130gとしています。
ただし、この「130g」をそのまま「食事から摂らなければ危険になる最低量」と考えるのは正確ではありません。
なぜなら、食事から入ってくる糖質が少ないとき、体には血糖を維持する仕組みがあるからです。
肝臓に蓄えてあるグリコーゲンを分解したり、乳酸、グリセロール、アミノ酸などからブドウ糖を作ったりします。これを「糖新生」といいます。
糖質摂取量がかなり少ない状態が続くと、肝臓で作られるケトン体を脳が利用する割合も増えていきます。
つまり、
体がブドウ糖を使う量と、食事から糖質として摂る必要量は、必ずしも同じではありません。
さらに、筋肉が使う糖質量は、運動量によって大きく変わります。
一日中座っている人と、肉体労働をする人、長時間運動する人では、必要となるエネルギーも糖質量も同じではないのです。
日本の基準では、糖質は「何グラム」ではなく「割合」
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、1歳以上の男女について、炭水化物の目標量を総摂取エネルギーの50〜65%としています。
糖質・炭水化物は1g当たり、おおよそ4kcalのエネルギーになります。
そのため、1日に必要なエネルギー量から、次の計算で目安を出せます。
炭水化物量(g)=1日の摂取エネルギー(kcal)×50〜65%÷4
計算すると、次のようになります。
| 1日の摂取エネルギー | 炭水化物の目安 |
| 1,600kcal | 200~260g |
| 1,800kcal | 225~293g |
| 2,000kcal | 250~325g |
| 2,200kcal | 275~358g |
これは食物繊維を含めた「炭水化物」の量です。実際の糖質量は、ここから食物繊維を除いた量になります。
したがって、一般的な食生活を送る成人では、糖質量が200〜300g前後になることも珍しくありません。
ただし、この範囲は「全員が必ず食べなければならない最低量」ではありません。生活習慣病の予防や、たんぱく質・脂質とのバランスを考えた目標範囲です。
結局、1日何グラム摂ればよいのか?
健康な成人が通常の生活を送っている場合は、まず次のように考えると分かりやすいでしょう。
体が使うブドウ糖量としては100g前後という数字が一つの基準になるが、健康維持のための食事量は、総摂取エネルギーの50〜65%から計算する。
つまり、「糖質は1日100gで十分」「130g未満は危険」「全員が300g必要」というように、一つの数字だけで決めることはできません。
必要量を左右するのは、次のような条件です。
- 体格
- 年齢
- 運動量
- 筋肉量
- 妊娠・授乳
- 体重を増やしたいか減らしたいか
- 糖尿病などの疾患の有無
- 一度に糖質を処理する力
- その日の活動内容
糖質量は「体重だけ」で決めるものでもありません。
大切なのは、量だけでなく「何から摂るか」
同じ50gの糖質でも、砂糖を多く含む飲料やお菓子から摂る場合と、玄米、雑穀、いも類、豆類などから摂る場合では、食物繊維、ビタミン、ミネラルの量が異なります。
おすすめしたいのは、主に次のような食品です。
- ご飯、玄米、雑穀
- そば
- オートミール
- じゃがいも、さつまいも、里いも
- 豆類
- 果物
一方で、砂糖入り飲料、お菓子、菓子パンなどは、糖質を摂れても、食物繊維や微量栄養素が少なくなりやすいため、主な糖質源には向きません。
糖質だけを単独で大量に食べるのではなく、肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質や、野菜、きのこ、海藻類と組み合わせることも大切です。
糖質を減らしすぎているサイン
糖質を控えることが合う人もいますが、極端に減らしてエネルギー不足になると、次のような変化が現れることがあります。
- 疲れやすい
- 集中力が続かない
- 運動時に力が出ない
- 夕方に強く甘いものが欲しくなる
- 食事制限の反動で食べすぎる
- 主食を減らした結果、食物繊維も不足する
- 体重とともに筋肉量まで減る
このような場合、「糖質が足りない」とは限りませんが、総エネルギー量や食事全体のバランスを見直す必要があります。
糖質を摂りすぎているかもしれないサイン
反対に、糖質の量や食べ方が合っていない場合には、
- 食後に強い眠気が出る
- 食後しばらくして、だるさや空腹感が出る
- 甘い飲み物や間食が多い
- 主食を何度もおかわりする
- 体重や中性脂肪が増えてきた
といった変化がみられることがあります。
ただし、食後の眠気や疲労感は、糖質だけが原因とは限りません。睡眠不足、食事量、食べる速さ、たんぱく質不足、貧血、甲状腺機能、血糖調節なども関係します。
「眠くなるから主食を全部抜く」と短絡的に考えず、食事全体と体調を確認することが大切です。
迷ったときの実践方法
グラム計算が難しい方は、まず次の形から始めてみてください。
- 毎食、主食を適量入れる
- 主食だけで食事を終わらせない
- 肉・魚・卵・大豆製品を組み合わせる
- 野菜、きのこ、海藻類から食物繊維を摂る
- 甘い飲み物やお菓子を、主な糖質源にしない
- 食後の眠気、空腹感、体重、便通を観察する
そのうえで、運動量が多い日は主食を少し増やし、活動量が少ない日は量を調整します。
まとめ
糖質について迷わないために、次の3点を覚えておいてください。
- 体が使うブドウ糖量と、食事から摂る糖質量は同じではない
- 日本の基準は、炭水化物を総摂取エネルギーの50〜65%とする考え方
- 必要量は、体格、運動量、健康状態、目的によって変わる
「糖質は絶対に悪い」「たくさん摂るほど元気になる」のどちらも、すべての人に当てはまるわけではありません。
大切なのは、糖質をゼロにすることでも、一つの数字にこだわることでもなく、自分の活動量と体の反応に合った量を、質のよい食品から摂ることです。
糖質を食べた後の眠気、疲労感、強い空腹、胃腸症状などが続く場合は、糖質量だけで判断せず、食事全体や体調を専門家と一緒に確認してみてください。