体の不調がつながっていく仕組み①「腸のバリアと炎症」
「しっかり寝ても疲れが抜けない」
「食後に眠くなったり、ぐったりしたりする」
「お腹の調子が安定しない」
「以前よりも、体調を崩すと回復に時間がかかる」
施術をしていると、このような悩みを同時に抱えている方が少なくありません。
一見すると別々の症状に見えますが、体の中では、
腸の状態→免疫反応→炎症→ストレス反応→血糖の調節
というように、それぞれが影響し合っていることがあります。
今回は、その出発点となる「腸のバリア」についてお話しします。
腸は、栄養を吸収するだけの場所ではありません
腸には、食べ物から必要な栄養を取り込む働きがあります。
しかし、腸の大切な役割はそれだけではありません。
腸の粘膜は、必要なものを体内に取り込みながら、細菌や有害な物質などが簡単に体内へ入らないように守る「バリア」の役割もしています。
例えるなら、腸の粘膜は体の中にある大きな入国審査場です。
必要なものは通し、入れてはいけないものは食い止める。この見分けが正常に働くことで、私たちの体は守られています。
腸のバリアが弱くなるとどうなるのか
睡眠不足、強いストレス、感染症、過度な飲酒、偏った食生活、一部の薬、腸の病気など、さまざまな要因が重なると、腸のバリア機能が弱くなることがあります。
このように腸管の透過性が通常よりも高くなった状態は、一般的に「リーキーガット」と呼ばれることがあります。
ただし、
体に合わないものを一度食べただけで、すぐにリーキーガットになるわけではありません。
また、腹痛や疲労があるからといって、すべての人に腸管透過性の問題があるとも限りません。
大切なのは、同じ食べ物を食べるたびに、
- お腹が張る
- 下痢や便秘が起こる
- 強い眠気やだるさを感じる
- 頭痛や皮膚症状が出る
といった一定の反応がないか、体の変化を丁寧に観察することです。
腸のバリアが弱くなると、腸内の細菌由来の成分などが免疫系と接触しやすくなり、体がそれを異物として認識することがあります。
すると免疫反応が続き、体内で炎症が起こりやすくなります。
炎症というと、腫れたり熱を持ったりする状態を想像するかもしれません。しかし、体の中では、本人がはっきり自覚できない小さな炎症反応が続くこともあります。
その結果として、
- 疲れが抜けない
- 頭がすっきりしない
- 寝ても回復した感じがしない
- 気分が安定しない
- 胃腸の調子が崩れやすい
といった、原因を一つに絞りにくい不調につながる可能性があります。
炎症を抑えるために働くコルチゾール
体内で炎症やストレス反応が起こると、副腎から分泌される「コルチゾール」というホルモンが働きます。
コルチゾールには、
- 炎症反応を調節する
- ストレスに対応する
- 血圧を保つ
- 血糖値を維持する
など、生命を守るための大切な役割があります。
コルチゾールは悪いホルモンではありません。
むしろ、私たちが活動し、ストレスに対応するために欠かせないホルモンです。
問題になるのは、炎症、精神的なストレス、睡眠不足、血糖値の乱れなどが長期間重なり、体が休む暇を失ってしまうことです。
この状態が続くと、単純に「コルチゾールを使い果たす」のではなく、脳と副腎を結ぶストレス反応の仕組みや、コルチゾールの分泌リズムが乱れることがあります。
朝になっても体が動かない。
夜になると逆に目がさえる。
空腹になると、強い疲労感やイライラ、冷や汗、動悸が起こる。
このような状態には、睡眠、自律神経、食事の取り方、血糖の変動、ホルモンなど、複数の要因が関係しています。
「すべて副腎疲労が原因」と決めつけるのではなく、体全体のつながりを見ることが大切です。
鍼灸にできること
鍼灸は、腸のバリアを直接修復する治療ではありません。
しかし、緊張が続いて交感神経が優位になっている体を緩め、呼吸、睡眠、胃腸の動きなどを整えるための一つの方法になります。
体がいつも警戒状態にあると、消化や回復に十分なエネルギーを回しにくくなります。
鍼灸によって体の緊張を緩め、「休む・消化する・回復する」方向へ切り替えやすい状態をつくることが、回復の土台になります。
今日から食事でできること
まずは、いきなり多くの食品を除去する必要はありません。
次の3つから始めてみてください。
1.食後の体調を記録する
食べたものだけでなく、食後の眠気、お腹の張り、便通、頭痛、皮膚症状なども簡単に記録します。
数日ではなく、1〜2週間ほど続けると、自分の傾向が見えやすくなります。
2.極端な空腹をつくらない
朝食を抜く、昼食を軽く済ませる、甘いものだけで空腹をしのぐといった食べ方は、血糖値を不安定にすることがあります。
食事では、炭水化物だけに偏らず、タンパク質や適量の脂質も一緒に摂ることを意識しましょう。
3.「体に良い食品」も反応を見ながら食べる
ヨーグルト、発酵食品、生野菜、果物、食物繊維の多い食品なども、すべての人に同じように合うとは限りません。
一般的な健康情報よりも、食べたあとの自分の体がどう反応しているかを見ることが大切です。
ただし、自己判断で多くの食品を長期間除去すると、栄養不足や食事への不安につながることがあります。除去する場合は候補を絞り、必要に応じて医療機関や専門家へ相談してください。
体は一方向に悪くなり続けるわけではありません
腸、免疫、自律神経、ホルモン、血糖は、互いに影響しています。
そのため、一つの問題が続くと不調が重なることがあります。しかし反対に、一つずつ負担を減らしていけば、良い方向にもつながっていきます。
睡眠を整える。
食べ方を見直す。
体に合わない可能性のあるものを整理する。
体の緊張を緩める。
必要な栄養を不足させない。
一度にすべてを変える必要はありません。
長く続いた不調ほど回復には時間が必要ですが、「もう元に戻らない」と悲観する必要もありません。
体が回復するための条件を、一つずつ増やしていくことが大切です。
次回は、
「炎症が続くと、コルチゾールと血糖の調節にどのような影響が起こるのか」
について、さらに詳しくお話しします。