仕事や家の用事が重なった週に、のどが痛くなり、鼻水が出始める。「忙しくなると、いつも体調を崩す」と感じることはありませんか。
前回の血圧に続き、今回はストレスと感染への反応を考えます。
風邪の原因はウイルスです
まず、ストレスだけで風邪になるわけではありません。風邪は、鼻やのどなどにウイルスが感染して起こります。人と接する機会や周囲の流行も、かかりやすさに関わります。
「疲れがたまっていたから」と説明できそうなときでも、新型コロナやインフルエンザなどが隠れている場合があります。症状だけで区別しにくいこともあるため、いつもの風邪と決めつけないことが大切です。
免疫は、強ければよいわけではありません
免疫には、侵入したウイルスなどに対応する働きがあります。その際に起こる炎症は、体を守る反応の一部ですが、強すぎたり長引いたりすると、体への負担になります。
ストレスを感じると、自律神経に加え、視床下部・下垂体・副腎が連絡する「HPA軸」が働きます。副腎から分泌されるコルチゾールは、活動に必要なエネルギーの確保や、炎症の調節に関わります。
長く続くストレスと風邪を調べた研究では、免疫細胞がコルチゾールの合図に反応しにくい状態と、ウイルスに接した後の発症リスクとの関連が示されました。鼻の中の炎症反応が強くなることとの関連も報告されています。
つまり、「免疫が一律に弱くなる」という説明だけでなく、「必要な反応を起こし、行き過ぎた反応を抑える調節がうまくいかなくなる」という視点もあります。ただし、この仕組みだけで、すべての人の風邪を説明できるわけではありません。
睡眠を削る生活も重なります
忙しいと、睡眠や食事を後回しにしがちです。ストレスと生活の変化を、両方見ていきます。
健康な成人を対象とした研究では、ウイルスに接する前の睡眠時間が短い人ほど、風邪を発症しやすい関連が見られました。睡眠を確保することは、感染対策と一緒に考えたい習慣です。
なお、風邪を繰り返すことだけで、コルチゾールの高低や副腎の異常は判断できません。「副腎疲労」は確立された診断名ではありません。
ビタミンCを不足させない食事も大切です
ビタミンCは、免疫の正常な働きを支える栄養素です。副腎にも高い濃度で含まれ、ストレスへの反応に関わっています。人の研究では、副腎を刺激するホルモンの作用によって、副腎からビタミンCが放出されることが確認されています。Health Professional Fact Sheet
日々のストレスに伴うビタミンCの利用や必要量の変化が、風邪のかかりやすさに関係している可能性も考えられます。
忙しい時期に野菜や果物を食べる機会が減っているなら、食事にブロッコリーやパプリカを加えたり、果物にキウイやみかんを選んだりしてみましょう。ビタミンCを多く取れば風邪を防げるということではありませんが、不足させないことは、体の働きを支えるうえで大切です。
鍼灸師として確認したいこと
23年の鍼灸臨床を踏まえ、体調の相談では「風邪をひく回数」だけでなく、その前後の生活も確かめたいと考えています。忙しい時期の睡眠、食事量、疲れが続く期間、家族や職場での感染状況が手がかりになります。
冷えや肩の緊張だけで免疫の状態は判断できません。鍼灸を感染予防の代わりにせず、発熱や咳があるときは休養や受診を優先します。
今日からできる3つのこと
1.忙しい日は、予定を一つ減らす
家事や仕事から、翌日に回せるものを一つ選びます。眠る時間を削らないための工夫です。
2.食事を抜かず、食べられる組み合わせを用意する
おにぎりだけで済ませているなら、卵や豆腐、魚などのおかずと、野菜を加えてみます。特定の食品で風邪を防ごうとするより、必要なエネルギーや栄養を不足させないことを意識しましょう。
3.手洗いと換気を、休養とセットにする
食事前や鼻をかんだ後は手を洗い、室内の空気を入れ替えます。症状があるときは外出や人との接触を減らし、必要な場面ではマスクも使って、周囲への感染を減らしましょう。
医療機関へ相談する目安
息苦しさ、水分が取れない、発熱が4日を超える、10日以上改善しない、一度よくなってから悪化する場合は受診を考えてください。強い息苦しさや胸痛は、早急な対応が必要です。
高齢の方、持病のある方、免疫を抑える薬を使っている方などは、軽い症状でも早めに相談してください。風邪を何度も繰り返す、長く治らない場合も、ストレスだけで説明せず確認しましょう。
体調を崩した自分を責めないために
風邪は、気合いや努力の不足で起こるものではありません。感染の機会を減らし、休む時間と食事を確保する。その両方から、無理の重なる毎日を見直していきましょう。